元プロ選手から“教えるプロ”になった南高出身の野球人
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情熱を持ち、周囲に影響を与える活動を続ける人を特集する新コーナー「街の情熱家~Eternal flame~」

記念すべき第1回目に取り上げる方は、横浜市立南高校(南高)・野球部出身の元プロ野球選手大石滋昭(おおいししげあき)さん。現在は、横浜市内を中心に未就学児、小学生、中学生、成人を対象にした野球教室を運営するNPO法人デポルターレクラブの代表をしています。

いったいどんな経歴で、どんな活動をしているのでしょうか?詳しくお話を聞いてきたので早速紹介していきましょう。

進学校出身の元プロ野球選手

野球を見ることすらやめた引退直後

NPO法人デポレターレクラブ代表の大石滋昭さん。1982年にプロ入りし、巨人、近鉄と2球団で合計3年のプロ生活を送った

大石さんが、通っていた当時の横浜市立南高校は、夏の大会で第2シード(春季大会でベスト8のチームが対象)になるような「公立の雄」的な立ち位置。その頃、150校近くが夏の大会に出ていたので、強豪校の1つではありました。

しかし、そこは激戦区神奈川。横浜高校、東海大相模、法政二高、横浜商業、日大藤沢、武相など全国区の超強豪校が群雄割拠する時代です。

そんな逸材が溢れる神奈川県内で、プロのスカウトの目にとまったわけですから、いかに突出した存在だったかということかが分かります。しかも内野手です。

当時の経緯を伺うと、横浜市立南高校3年生の時に、地元の大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)と巨人から「ドラフトで指名するかも」と打診があったそうです。

結果的にドラフト指名はなかったものの、ドラフト会議が行われたその日のうちに巨人からドラフト外ながら獲得の意志をつたえられ、2つ返事で入団を決めたそうです。

当時のプロ野球は、ドラフト6位までしか各球団が指名できず、ドラフト外やテストを受けての入団も珍しいことではありませんでした。ちなみに大石さんが入団した年には、ミスターパーフェクトこと槙原寛己さん、後の主力選手で巨人の現一軍打撃総合コーチである吉村禎章さん、後の正捕手で昨年まで巨人の一軍ヘッド兼バッテリーコーチを務めた村田真一さんなどが高卒としてドラフト入団しています。

そんな大石さんですが、プロ入りして感じたのが圧倒的なレベルの高さ。俊足がストロングポイントだと思っていたものの、プロではもっと速い人が当たり前にいたとのこと。そしてもう1つの売りであるバッティングも、プロの投手たちの変化球のキレの凄さに野球人生ではじめての挫折を味わったそうです。

「引退後は、しばらくの間、野球を全く見なくなりました。今ならトライアウトもありますが、当時、あったとしても僕は受けなかったと思います。それくらい挫折を味わいました」

巨人で1年半、トレードで移った近鉄で1年半、都合3年でユニフォームを脱ぐことになります。

そんな大石さんが再び野球と接点を持つのは、息子さんが小学3年生の時に少年野球を始めたことがきっかけとなります。

当時は、ゴルフレッスンのインストラクターをしていて、教えることのノウハウを身につけていたこともあり、 自分の強みである野球を子どもたちに教えてみようという気になったそうです。

自ら門を叩いたジャイアンツアカデミー

 

本格的に子どもたちに野球を教え始めたタイミングで、古巣・巨人が「ジャイアンツアカデミー」という子ども向けの野球教室を立ち上げます。

そこから大石さんの情熱家ぶりが発揮されていきます。

何と!
本格的なコーチングを学ぶために自ら「ジャイアンツアカデミーで教えさせてください」と頭を下げに行くのです。そしてそこから3年間、ジャイアンツアカデミーの現場でコーチングをみっちりと学びます。

いくらOBとはいえ、そこは狭き門。それを承知でチャレンジする姿勢もカッコいいですが、実際に採用されているわけですが、なおスゴイ。大石さんの熱意と本気度が、ジャイアンツアカデミーの門を開かせたのです

そしてジャイアンツアカデミーで学んだ経験を活かす形で、2009年にNPO法人デポルターレクラブを立ち上げます。未就学児、小学生、中学生、成人を対象とした野球教室を運営する団体です。名前の由来は、ラテン語で「スポーツ」を意味する言葉で、「遊び、気晴らし、開放的な」という意味もあるそうです。その言葉通り、この教室は野球の楽しさを知ってもらうことに軸足を置いています。

一般的に野球をやろうと思ったらどこかのチームに入ることを考えがちですが、チームに入る前に基本を学びたい子や、チームに入っていてもより上手くなりたい子の受け皿として機能しています。

いわば習い事として野球を学ぶ場所であり、平たく言えば野球塾

もちろんきちんと基本教えてくれるような野球チームもありますが、試合を軸に活動しているとどうしても「勝つ」ことに軸足が移りがちになります。そうしたことを考えると、この野球教室のニーズは、必然といえるでしょう。

そうした活動をはじめての10年以上が経ち、この春からは出身校である横浜市立南高校からも程近い日野中央公園での定期的な野球教室がスタート。これまでは、磯子区(新杉田公園)、栄区(金井公園)が主な活動場所(その他に横須賀市、金沢区、千葉市)でしたが、この港南区でもレギュラー開催されるようになりました。

“元プロ野球選手に教えてもらえるのはいいですね”と素直な感想を伝えると、大石さんははにかみながら、「たった3年しかプロにいませんでしたから、そんなおこがましいことは言えません。なので、プロ野球OBというより、プロ野球経験者と名乗っています」と語っていました。

自らつかんだ出版のチャンス

ちなみに大石さんは、これまでに野球に関する2冊の著作を出しています。元プロ野球選手で、ジャイアンツアカデミーでのコーチ経験があることから、そうしたツテで出版されたのかと思いきやさにあらず。

なんとご自身で、企画書をしたためて方々の出版社を売り込んで回ったそうです。

話としては、そういうケースはよく見聞きすると思いますが、多くが門前払いとなり、実際に出版されるケースは決して多くはありません。私も前職で出版社で編集者をしていましたが、売り込みの場合、世間的には無名の方が多く、初版部数が見込めないことから、社内の企画会議でまず通りませんでした。よほど企画の内容がよく、担当編集者が大石さんに惚れこまなければ実現しないといえます。

しかも2冊目も出ているので、最初に出した1冊目がしっかり売れたことを現しています

1冊目の『野球の教え方、教えます!』
2冊目の『読めばメキメキうまくなる 野球入門』

野球に例えるなら、プロ野球のチームに自ら入団テストを申し入れ、見事合格、そして1軍でも活躍するようなもの。

ここでも大石さんの情熱家ぶりが発揮されていたのです。

また、変わった経歴として、映画の野球監修者としての顔もあります。参加した作品は、映画『アゲイン 28年目の甲子園』と『青空エール』


私は、たまたま『青空エール』を見てましたが、竹内涼真さんの“高校球児”っぷりに心打たれていたので、驚きもひとしおでした。

実際、作品を見たときには竹内さんは、学生時代、サッカー一筋だったことを知っていたので、当初は「どれほどのものか」と見ていましたが、納得の高校球児っぷりでした。その影に大石さんの指導があったのだと思うと、胸アツです。

実際、竹内涼真さんは練習初日に大石さんと顔合わせした際に「ツーベースヒットって何ですか?」と聞いてくるほど、野球から遠いところにいたそうです(笑)。

といった形で、たっぷりとお話を聞かせてくれた大石滋昭さん。進学校からプロ入りした経歴に注目してのインタビューでしたが、実は引退後の方が、より精力的に活動し、野球の裾野拡大に尽力する情熱的なすごい方でした。

プロ野球選手のセカンドキャリアは、しばしば話題になるテーマですが、華々しい経歴に奢ることなく、自らの意志と努力で道を切り開いてきた生きざまはカッコいいの一言

次回は、大石さんの野球教室にお邪魔してどんなレッスンをしているのかを紹介していきます

第二回 好きこそ上達の最短距離!南高出身の元プロ選手が教える野球教室

●人物詳細
大石滋昭(おおいししげあき)さん

NPO法人デポルターレクラブ代表/日本プロ野球OBクラブ会員。 元東京読売巨人軍・近鉄バファローズ 内野手(右投・右打)。横浜市立南高校からドラフト外で巨人に入団(1982年)。翌年、近鉄に移籍。3年間在籍するも一軍の経験なし。退団後は会社員を経て、1990年よりゴルフ指導員としてレッスン活動を開始。並行して2007年から3年間、ジャイアンツアカデミーのコーチを務め、野球の指導方法を学ぶ。その後、デポルターレクラブを設立し、幼児・小学生・中学生及び成人の野球スクールを主催している。スクール運営の他に、映画「アゲイン 28年目の甲子園」で、野球技術の指導及び野球シーンの監修を担当した。

著書
『読めばメキメキうまくなる 野球入門』
『野球の教え方、教えます!』

http://npodeportareclub.web.fc2.com/top.html

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