奇跡を起こし伝説となった吹奏楽部。県立野庭高校跡地を尋ねて
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  • 情熱は時に人を巻き込み奇跡を起こします。
    2016年7月期にTBSで放送されたドラマ『仰げば尊し』を覚えていますか?横須賀にある不良が多く通う高校の弱小吹奏楽部の指導を任された元プロミュージシャンと、吹奏楽部の生徒たちとの交流と成長、奇跡を描いた作品。

    高校の吹奏学界に新たな風を吹き込んだ野庭高校吹奏楽部が起こした奇跡

    ドラマ『仰げば尊し』でも使われた旧・野庭高校の校門

    主演の寺尾聰さん、学生役の真剣佑(現・新田真剣佑)、村上虹郎北村匠海太賀石井杏奈など注目の若手を器用したドラマで、最高視聴率12.2%とヒット作となりました。

    まちの誇りであり多くの人に愛された「野庭の音楽」

    今は無き高校に伝説の吹奏楽部があった!

    この作品のベースになっているのが、神奈川県立野庭高校の吹奏楽部を指導した中澤忠雄さんと生徒たちが巻き起こした奇跡です。『ブラバンキッズ・ラプソディー』(石川高子 著)というノンフィクション作品としてまとまっています。

    野庭に高校なんてあったけ?』と、若い人や最近港南区に来た人は、思うかもしれませんが、あったんです。1975年4月に創立され、多い時には1,600人という生徒数を誇ったマンモス校でした。

    しかし、少子化に伴い2003年に日野高校に統合される形で廃校に。跡地には現在、公益財団法人かながわ考古学財団 野庭出土品整理室、神奈川県教育委員会 文化遺産収蔵センターとして、活用されています。

    吹奏楽部版『スクールウォーズ』

    実は、この『ブラバンキッズ・ラプソディー』が読み物として最高でした。おまけに舞台は、上大岡~野庭ときています。

    この作品を端的に表現するなら、吹奏楽部版の『スクールウォーズ』

    失礼を承知で書けば、野庭高校は、高偏差値の学校ではなくいわゆるヤンキー校、部活も弱小レベル。その吹奏楽部の指導を依頼されたのが、トップレベルを知る元チューバ奏者の中澤忠雄さん。

    『うまくいくわけない』『苦労するだけだ』という周囲の反対を押しきり、嘱託の指導者となり、文字通り全身全霊を傾けて、生徒と向き合い、わずか2年で、全国大会に出場し、金賞を受賞するという奇跡を起こします。

    さらにその後、10年以上指導を続け、全国大会への出場7回。全国大会では、マイナスのない演奏が主流だった時代に、人の心に感動をもたらす『冒険の音楽』をして、新風を吹き込んだのが、中澤忠雄さんの率いる野庭高校の吹奏楽部だったといいます。

    1人の情熱が、徐々に伝播していき、その情熱が混ざり会い、さらなる良縁を呼び、奇跡を起こすための歯車が回り始める。『ブラバンキッズ・ラプソディー』を読んでいると、そんな高揚感を体験できます。

    そこで今回の野庭高校跡地への訪問です。
    本に感動して、その登場人物たちが見た景色、吸った空気を少しでも生で感じたかったのが理由です。

    野庭高校跡地で感じた哀愁の正体


    私は、正直申し上げると『仰げば尊し』を見るまで、野庭高校の存在も、中澤忠雄さんと吹奏楽部の話も知りませんでした。現在進行系の成功譚なら、ドラマが始まったタイミングでどこかしらで噂を耳にしたはずです。

    かつては放課後になるとブラスバンドの練習音がそこかしこから聞こえていたのかと思うと胸が熱くなる

    それがなかったのは、すでにこの話が過去のものになってしまっているからだと考えました。

    調べてみると、中澤さんは、1996年8月に61歳の若さで病気で亡くなっていました
    その後も、吹奏楽部は存続しますが、様々な理由から低迷していったといいます。

    そして2003年の統合で、神奈川県立横浜南陵高校になり、野庭高校の吹奏楽部は歴史の幕を閉じます

    そうした事情を知ると、
    松尾芭蕉がよんだ
    夏草や兵どもが夢の跡
    ではないですが、野庭高校跡地に哀愁といとおしさを感じます。

    もう中澤さんが育てあげた野庭高校吹奏楽部が奏でる音楽をもう生で聞くことができないのかぁ…と。どんなに素晴らしかったのか、一度、生で聞いてみたかったとも。

     

    中澤イズムは健在だった!卒業生が定期演奏会を実施

    高校も吹奏楽部もなくなり、さらには中澤さんもいない今、どこで野庭高校吹奏楽部の音楽を聞けるのか?

    YouTubeを探したら、それらしい映像は見つかりますが、やはり生で聞きたいものです。今となってはかなわない夢かと諦めかけていた時にたどり着いた先が、『ナカザワ・キネン野庭吹奏楽団』のWebサイトでした。2004年9月に神奈川県立野庭高等学校吹奏楽部の卒業生で発足した同楽団は、春の“定期演奏会”と夏の“中澤忠雄先生を偲ぶ8月の演奏会”を2本柱として、生前 中澤忠雄さんの「野庭の火を灯し続けてほしい」という想いを胸に演奏活動をしているそうです。

    8月の演奏会は、終わってしまいましたが、来年3月の春の定期演奏会は日程が決まっていました。

    第15回 定期演奏会

    【日程】2019年03月23日[土]
    【会場】みなとみらい 大ホール
    【時間】開場 17:15 開演 18:00
    【曲目】未定
    【チケット】未定

    詳細はまだ未定ですが、すっかり野庭高校吹奏楽部に魅了されてしまったので、足を運びたいと思っています。

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